どうせ死ぬのならお煎餅を食べたい

ウチの近所にあるお店、陣馬せんべいは、濃い味の付いた「味噌せん」が売りだ。硬いせんべいの表面に甘辛い味噌が厚くコーティングされたそれはなかなか美味しい。
これは本来は高級品なのだけど店頭には時たま割引価格の割れせんべいも売っていて、食べたくなった日にはそれを買いに行っている。

しかし考えてみるとこの、食べたくなるという感覚は面白い。頭の中にそれが想起されると、それの存在が前提とされる未来が思い描かれ、それに対する渇望がますます強くなる。
食べたいと思うことによってそれは世の中に存在する様になると言い換えても良い。

最初の一つがこの世に登場した理由は単なる偶然なのかもしれない。
江戸時代、茶屋のおばあさんが売れ残った団子を川に捨てていると、それを見たお侍さんから、「そんな勿体ない事はやめなさい。平たく伸ばしたうえで網で焼いて御覧なさいと」言われて試しに客に供してみたら大ヒット! 因みにそのおばあさんの名前はおせんさん。それで作ったお菓子はお煎餅と呼ばれた。
てなところだろう。
しかし、そのようなものが今日まで存在し得た理由は、今なお人々から思い起こされるからに違いない。人が思うことによってそれは世の中に存在し得るのだ。

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